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今戸焼・今戸人形について

今戸焼について①

一昔前までは、「今戸焼」といえば、落語好きや江戸趣味の方でなくても、関東地方一円で通用した言葉でした「今戸焼」は浅草今戸町を中心に隅田川沿岸に栄えた江戸東京の焼き物のブランド名で、硬焼の食器類を「瀬戸物」と呼ぶのに対して、素焼きや楽焼の雑器類を「今戸焼」と呼んでいたようです。また「今戸焼」からは「今戸焼の土人形」も生まれ、身近に愛されていました。現在では東京の人でも「今川焼き」のことですか?という人にも随分出会います。ここでは、そうした「今戸焼」についてお話したいと思います。                                         庵主 吉田義和

今戸焼
 浅草、今戸町。観音様のある浅草の中心部から北東に隅田川をb遡り、言問橋を過ぎて左に「待乳山聖天」を眺めながら進むと、大きな建物。「台東区リバーサイドスポーツセンター」、そしてX橋で有名な「桜橋」の袂に出ます。ここが今戸。現在も台東区今戸という町名が残っています。遠い昔はには「今津」という地名だったと言われています。今では暗渠となった山谷掘の水門の辺りは竹屋の渡しの発着場だったそうです。
 現在、今戸に残るただ一軒の窯元「白井さん」の工房がスポーツセンターの筋向いにあります。(ただし今戸に残る一軒ということで実際には、葛飾区内には今戸焼屋さんはまだ健在です。)また今戸神社(旧・今戸八幡)の境内には宝暦2年に建立され、文政5年に再興されたという石彫の狛犬一対が残されており、その基壇には、「焙烙屋中」「当町火鉢屋中」「土器屋」の42人の名前が刻まれています。
銘文についてはこちらをご覧ください。

 また「隅田川両岸一覧」や「江戸名所図会」などを見ますと、今戸から北隣の橋場にかけて川沿いにいくつもの「だるま窯」や「ひょっとこの口のような形の窯」、積み上げられた薪の山などが見え、窯業を生業とする家の集まる地域だったことが偲ばれます。
 
 その発祥については明らかにされていませんが、一説としては
「千葉氏の族江戸太郎重長が石浜城に在住し、治承年間、源頼朝を援けて功があったが、後に天正年間に家門は断絶しその家臣等は今戸に土着の上、瓦ならびに土器等を作り、これを生業とするに至った。」と言われています。また、この辺りの土は、粘土を含み、瓦や土器の製造に適するものであったことが、窯業の発生につながったと言われています。

 「慶長見聞集」によると「慶長6年霜月、駿河町より江戸市中は大半類焼したので、新しく新しく建築する屋根には、板葺きとすべき旨お触れがあったが、中にも本町2丁目に居住する瀧山某という者は往来筋を棟より半分瓦で葺き、残り半分を板葺きにした。」のが江戸での瓦葺きの最初で、その後瓦葺きは増え、将軍吉宗在世中、享保頃には江戸市中の建物は面目を一新したということです。
 その生産地は今戸、橋場をはじめとする隅田川・荒川流域の窯場であったことと考えられます。古い切り絵図を見ますと、他にも中之郷瓦町(墨田区吾妻橋付近)、聖天町瓦町(台東区浅草7丁目付近)、瓦町(台東区浅草橋、柳橋、蔵前付近)などの地名が見られます。

 瓦葺きの普及によって、今戸の窯業への需要が拡大し、その発展に繋がっていったものと考えられます。


※面白い記事があるので、要約して記します。

 天正18年家康が江戸に入城し、2代秀忠は京都の土風炉師「天下一宗四郎」と土器師「松平新左衛門」を江戸に呼び寄せた。宗四郎は姓を松木と改め、新左衛門は松井と改めた。
 松井新左衛門は下谷入谷町に、松木宗四郎は下谷練塀町に窯を築いた。その頃三河から土屋という火鉢師が五人の工人を連れて本郷湯島の里に窯を築いて、土器や雑器を焼いていたが、明暦3年の江戸の火事に遭って、武州豊島郡今津村(今戸)へ移り窯を築いた。
 松木宗四郎は天下一の称号を賜った御用土風炉師で、彼が今戸で土風炉を焼いた。これが今戸の土風炉の始まりで、白井善次郎や白井半七は松木宗四郎らに土風炉の製法を習ったのではないかと考えることもできる、、、、。「江戸 今戸焼考」水島一耀 「陶説 175号」より。

今戸神社の狛犬の銘文については、ブログ「今戸人形」カテゴリー記事をご参照ください。
 「名所江戸百景
   墨田川橋場の渡            かわら竃」
 広重 画   安政4年
          
 今戸神社(旧今戸八幡)
           狛犬
宝暦2年建立 文政5年再興
                  
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